連載第79回 痛がゆいケツの穴
「痛っ!」
トイレから出て来た宮迫くんが、お尻を押さえて苦痛に耐えている。
「痔?」
「違う!痛痒いっていうか…」
「お尻の穴にウンコついてるんちゃう?」
「ちゃう、痛いってより熱い」
「辛いもん食べたの?」
「うん。しかも下痢。うっ、またや…」
と、何度もトイレから出て来ては、ひき返していた。
が、しばらくすると、出るものが出尽くしたのか、席に戻り、歓談していた。
さっきまで、ケツの穴に振り回されていたのに、かなり真面目な話をしている。
すると、
『♪メールを受信しました』
と携帯が鳴った。
見ると、ジャリズム・山下の携帯だった。
すると山下は、
「あっ!メール受信しましたよ」
と、壁に向かって言い、
「あっ、壁や!」
と、焦り、今度は宮迫くんに向かって
「メール受信しましたよ」
と、言ったのだ。
???
みんなキョトン…、である。
何故なら、その携帯は山下のものであり、その携帯にメールが届こうが、何が届こうが、我々には一向に関係がないのだ。
わざわざ、報告することもない。
しかも真面目な話中だ、なんだったら黙って気付かれないように見るのが礼儀ってもんだろう。
しかも、なぜ一度、壁に向かって言った?
宮迫くんは目の前に座っているではないか。
壁と宮迫くんを間違えたというのか?
間違えるにも程があるぞ。
あまりの訳の分からぬ出来事に、宮迫くんも言葉を失っている。
しかし、山下のこの様な訳の分からない行動は一度や二度ではない。
一体、何なのだ、と宮迫くんのお説教が始まった。
これもいつものことなので、ニヤつきながら眺めていると、なんと、宮迫くんの声がどんどん鼻声になっていっているではないか。
もう、全ての言葉が濁音になって、聞き取りにくいったらありゃしない。
「宮迫くん、すごい鼻声なってるよ」
「あ、ホンマや」
「風邪?」
「風邪ちゃう」
「花粉症?」
「花粉症にはまだ早いやろ」
「いや。テレビでも花粉情報やってたし、さっきも、花粉症の人ら、今日は来てる、って言ってはったで」
「そうなん?確かに花粉症かもしれへんなぁ」
今日の宮迫くんはケツの穴が熱痛くなったり、下痢が止まらなくなったり、山下を説教したり、と何かと大変である。
その上、花粉症にまでなるとは…。
私は人が、序々に花粉症に成りゆく様を初めて目撃した。
しかし、一度は認めたものの、花粉症を発病した、と、認めたくないようで。
「やっぱ、風邪かもしらん」
と、おでこに手を当て、熱がないか確認していた。
「あっ、熱あるかも」
「マジに?」
と宮迫くんのおでこに手を当ててみたのだが、発熱は確認出来なかった。
すると、宮迫くんは、それでも、花粉症とは認めたくなかったのか、山下のデコに手を当てていた。
すると…。
「お前の方が熱いやないかっ!」
最後の望みも、山下ごときに断たれ…。
宮迫くんにとって、踏んだり蹴ったりの一日であった。
とことん空気の読めない男、それが山下。


