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 読者の感想1 - 2013.10.25

過酷な運命の元で生きた少女が、時代を超えて、「今の時代」を生き抜くヒントをくれる。

「過去にこんな酷いことがあったのか」という感想だけでは終われない、そんな一冊でした。この本を読む人は、リンダに同情し、ドクター・フリントらの血が通った人間がするとは思えない言動に、怒りを覚えるかもしれない。でも、私はそうはなれなかった。もちろん、あまりにも残酷で卑劣な彼らの言動に、何も感じずに読み進めていたわけではない。ただ、「彼らもまた、被害者なのかもしれない」という考えが、ずっと抜けずにいたのだ。今のこの時代に生まれ、日本という豊かな国で育った私には、リンダが生きた時代の「何が善で何が悪」なのかを、決めることはできなかった。表面だけを見れば、誰が善で誰が悪なのかは一目瞭然で、小学生でも分かる。しかし、あの時代のあの地に生まれ、奴隷制のある場所で育ったとしたら、私はリンダのように命をかけて闘うことができただろうか。また、奴隷でなく生まれたとして、私はリンダの友であるブルース夫人のように、奴隷制に心の正義を蝕まれることなく、恥じることのない人生を生きられただろうか。今の私がタイムスリップしたなら、それは容易だ。しかし、あの時代に生まれていたら、その答えは変わってくるかもしれない、と思えてならない。時代や環境のせいにして、「だから仕方がない」と言いたいわけでは、もちろんない。ただ、人間とはいかに弱いものかを知ったように思う。リンダの決して屈しない生き方に、とてつもない強さを感じる一方で、フリント夫人らの言動から、人間の弱さもまた、強く感じた一冊だった。

 過酷な運命の元で生まれたリンダの生き方、決して諦めない強さは、時代を超えて「そうでありたい」と思う姿そのものだった。リンダことハリエット・アン・ジェイコブズは奴隷制の実情を知らせるために書いたのだろうけれど、約120年の歳月を経て、私は彼女に奴隷制についてだけではなく、人としての強さそして人間が持つ弱さ、またリンダの生き方がそうであったように、時代や環境に流されることなく挑み続ける大切さを教えてもらった。

 人として皆が当たり前のように求めていい安らぎや家族とのしあわせを、求めることさえも許されなかった人々のことを想い、私は読み終えた今もこの本のことを頭から離すことができずにいる。

 今の時代も、例え家族がいて明日の心配をしなくて良い環境にいたとしても、生き方が分からずに苦しんでいる人たちはいる。そしていつの時代も、時代や環境に流され、自分の意思を持たずにいる人たちも多く存在する。この本を読む人は歴史を学ぶのではなく、生き方を学ぶのだろうと思う。今の日本に必要な一冊な気がしてならない。

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