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 読者の感想2 - 2013.10.25

色々な経緯を経て、この物語に出会えたことを心から嬉しく思う。

『ある奴隷少女に起こった出来事』。そのタイトルから想像して、どんな凄惨な事実が語られているのだろうと、固唾をのんだ。家族に囲まれた幸せな子供時代から一転、フリント家での憂鬱な暮らしの描写は、実際に読んでいてとても気分が重くなった。<神の似姿どおりにつくられた奴隷は、奴隷所有者の目には、畑に植えた綿花や、飼育した馬にしか見えないのだ。(p25)>という表現が多くを物語っている。

 少女時代の試練の章以降は本当に心苦しい。思春期の奴隷少女に対する性的虐待。なんておぞましく悲しいことだろう。この現実を突きつけられる恐ろしさを、私は完全に理解はできない。しかし、このような絶対的服従の下、女性がひどい扱いを受けることは現代でも起こりうることだ。それは、今の社会においても女性が“幸せ”を自らの力だけで得るということが決して簡単なことではないから。訳者の堀越ゆき氏の言う「現代に生きる少女もまた現代グローバル資本主義社会の奴隷である」という言葉は、いまだ結局は男性に頼らざるを得ない社会に息苦しさを感じる女性の現実を表しているのだと思う。

 物語全体を通して突き刺さったのは、奴隷制度や人身売買という現実の悲惨さもそうだが、何よりリンダ自身のもつ一貫した精神的強さだ。幼少期から最後まで、どんなにひどい扱いを受けても、苦しい状況に自らを追い込んでもリンダは心から奴隷ではなかった。自尊心を失わないその気高さに何度も心を動かされた。

 いかなる状況下でも女性が自分自身を否定せずに生きていくことの大切さ、苦しみを乗り越えてでも自由を獲得することの素晴らしさをリンダ=ジェイコブズは教えてくれた。

 最後に、解説で佐藤優氏が述べている<堀越氏とこの本の出会いは、偶然のように見えるが、そこには目には見えないが確実に存在する超越的な力が働いている。>という一説が心に残った。確かにシンクロニシティのような何らかの引力が働いて、今に繋がっているのだろう。堀越氏の翻訳によりこの物語を知ることができ、とても胸を打たれた。色々な経緯を経て、この物語に出会えたことを心から嬉しく思う。

 

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