クズの遠吠え カレー沢薫

学生時代の一番の負け組は、
カーストの最下層でも菌類でもなく、
一見真面目な「二軍型クズ」である。

上と下ありきの存在

スクールカースト。学生当時、皆はどこに所属していただろうか。
そう言われて一番目が輝き出すのは、意外にも一番下の奴だったりする。

世の中には、低ければ低いほど勝ち、という業界がある。非リア充界隈はその最たるもので、学生時代イケてなければイケてないほど徳が高いのだ。
その界隈から見れば、高校時代に彼氏や彼女が一瞬でもいれば「片腹痛い」のレベルであり、共学なのに異性と話した回数がゼロぐらいから、ようやくリングに立てるような世界である。

そのクラスになると、もはや「イケてないグループに所属していた」という、一見非リア充としてプラスになるような要素でさえ「グループに所属できていた時点でイケてなくない」というマイナス査定になるのである。
もはや、学生時代イケてなかった、というのは武勇伝であり「昔はワルだった」級の青春自慢の一つとなっている。

つまり、スクールカーストの話になると、注目されるのは大体、一番下か一番上、もしくは一番下の下にいる、クラス全員が存在を覚えていない「菌類」ポジの奴である。

そして、一番触れられないのが中間層だ。今回のクズはそこである。

【二軍型クズ】
学校のクラスにおいて目立つグループの一軍にはなれないが、二軍にはなれて、
自分より下の階層の連中を巧みに見つけて叩き、うまく一軍の標的を交わすクズ。

思い返してみると、イケてるグループの奴というのは、そんなにイケてないグループをいじっていただろうか。そしてイケてないグループの奴は、イケてるグループを目の敵にしていただろうか。

イケてる奴は、イケてない奴など眼中になかったし、マウンティングもイケてる奴同士でやっていた気がする。
イケてない奴は独自の世界を築きすぎていて、他人のことなど気にしていなかった。むしろ、この「圧倒的他人への興味のなさ」が、多くのイケてないグループに存在するコミュ症最大の特徴と言っていい。

つまり、イケてないグループをバカにし、イケてるグループを「なんかこいつら気にいらねえ」と思っていたのは、この二軍層なのではないだろうか。

また、この二軍層は「真面目型クズ」の主な生息地でもある。
教師だって、注意を払うのは、目に見えた不良や、大人しいが、いつ八つ墓村ルックで登校してくるかわからない危険人物である。

この二軍層は、教師や大人から見ると「手がかからない」「無害」な層なので、ある意味一番教師受けがよく、「真面目」と思われている層である。

しかし、よく見るとノーマークなのをいいことに、ありとあらゆることに手を抜いていたりする。
だが、何せ上と下では、デカい花火がドッカンドッカン上がっているので、二軍層が吐いているタバコの煙など気づかれない場合が多いのだ。

ただし、一番内部での関係性が危ういのは、この層である。
何せ上と下の存在のおかげで、この二軍層は均衡を保っていると言っていい。
下をバカにすることと、上の連中の悪口を言うことで、団結しているようなグループである。

もし、この上下がいなくなったら消滅か、二軍層内で新たに、バカにする相手と悪口を言う相手を作り出そうとする「内乱」が起きる。
会社で絶対悪とされていたお局が辞めたら、世界が平和になるかというと、また新たな魔王が擁立されるのと同じだ。

平和とは、悪がいない状態ではない。皆が一致団結して、憎むべき悪がいるときが一番平和なのだ。
つまり二軍の平和は、上と下がどれだけ派手にドッカンドッカンしてくれるかにかかっているという、上と下ありきな存在なのである。

上と下に頑張っていただかないと、周囲の注意が向いてしまい「よく見たらこいつら真面目でもなんでもねえ」ということが露見してしまう。

よって「真面目型クズ」という言葉と定義が出てきたことは、この層にとっては「冗談じゃねえ、こちとら商売あがったりだよ」な話なのである。
他に表現する言葉がなかったので、何となく「真面目科」に入れられていたのに、いきなり「クズ科」に入れられるという逆飛び級である。

しかし「そこまで悪いことをしているわけではない」というのも、二軍型クズの特徴だ。
かといって、よいことをしているわけでもなく、三軍いじりと一軍の悪口で構成された青春なため、冒頭の「学生時代どうだった?」的な質問をされると、一番言うことがなかったりするのもこの層である。

「走馬燈の内容が薄い」
それが二軍型クズの人生である。