大和書房いつまでもたどりつかない日記〜小説家は3度嘘をつく 唯川 恵 WEB限定連載

 

vol.22  女友達と気質、その関係性



 少し前、女性数人での食事会があった。
 子供あり子供なし。未婚に既婚。離婚経験者もいれば、未入籍婚
者もいる。共通点は、ほぼ年代が同じで仕事を持っている、という
ことだ。
 初対面の女性もいたので、出掛ける前は、いったいどんな展開に
なるのだろう、と、少しばかり緊張していた。話題についていけな
かったらどうしよう、という思いもあった。

 というのも、三十代から四十代にかけて、私は同世代の女性の集
まりが苦手だった。
 彼女らの多くは結婚し、子供を持っていて、興味はもっぱら子育
てに向いていた。その情報交換か探り合いが、話題の中心だった。
 独身で、その上子供もいない私にとっては、正直なところ、退屈
な会でしかなかった。何か言ったとしても、
「そうは言うけど、あなたは子供がないからわからないのよね」
 と返されてしまう。実際、その通りなのだから、口出しはできな
い。むしろ、下手に反論して、子供がいる彼女らを羨ましがってい
ると思われるのではないか、と、余計なことを考えてしまう自分も
またストレスだった。

 そんなことを思い出しながら出掛けたのだが、これが想像以上に
楽しかった。

 楽しかったのは、たぶん、話題がひとつのことに集中し過ぎない、
というのがあったように思う。

 子供の話ももちろん出る。嫁姑問題も出る。社会問題も、介護話
も、健康話も、愚痴も、恋愛話も盛りだくさん。けれども、みな、
執着しない。ある程度話すと、さらりと話題を変える。もちろん、
面白ければ話し込むが、まわり以上に、言い出した本人が執着しな
い。
 時々、何がなんでもこの話を聞いてもらわなければ、と意気込ん
で喋り続ける人がいる。たいていの場合、みな気を遣って聞いてい
るだけで、内心では「その話、いい加減にしてくれないかなぁ」と
思っている。誰かがさり気なく話題を変えようとしても、強引に引
き戻す。
 誰にだって聞いてもらいたい欲求はある。けれど、そこには相手
がどう受け止めているかの想像力も必要のはずである。
 大人の女性たちはそれを知っている。
 だから楽しい。

 実は、その集まりの中で、もうひとつ久しぶりに感じたことがあ
った。
「気質」というものである。
 仕事や家族の中では、気質よりも、役割を優先してしまう方が多
い。それぞれに立場があり責任がある。自分よりも、まずは自立し
た社会人であり、妻であり母親であらねばならなかったりする。
 そんな時代から少し抜け出て、やっと本来の自分に還れる年代に
なった。そう、この年になったからこそ「気質」が、素直に現れる
ようになったのだ。

 気質に関して、いろんな分け方がある。血液型による気質判断や、
星座、干支、などなど。
 そんな中で、長女気質、次女(中間子)気質、末っ子気質、ひと
りっ子気質、この四タイプは、なかなか的を射ているのではないか
と思う。
 で、少し、調べてみた。
 要約するとこんなイメージだろうか。

「長女気質」は、妹や弟の世話を任されるせいもあって、面倒見が
よく、責任感が強く、しっかり者である。けれどその分、周りから
お節介と感じられることが多く、また、私が頑張らねば、と、肩に
力が入り過ぎ、自分をがんじがらめにしてしまうところがある。
「次女(中間子)気質」は、相手の気持ちを読むのが上手く、自分
がどういうポジションでいればいいのか素早く理解する。社交的で、
話し上手でもあり、同時に聞き上手でもある。けれども、実際は、
負けず嫌いでひどく強情なところがあり、二つの顔を使い分ける。
「末っ子気質」は、甘えん坊なのに生意気、臆病なのに嫉妬深い、
と、対極の感情を持ち合わせている。姉や兄がいるので、居場所が
ないように感じる分、想像力にたけ、注目を浴びたがり、要領よく
自分をアピールする能力を持っている。他力本願的。
「ひとりっ子気質」は、きょうだい間の競争がないまま育つので、
のんびりしていて、マイペース。集中力があり、物事を最後までや
り通す。その分、融通がきかなかったり、我儘だったりする。とに
かく団体行動が苦手である。

 もちろん一般的なイメージというだけで、実際は違う場合も多々
あるだろう。次女と中間子(この呼び方も馴染まない)をいっしょ
くたにしてしまうのもどうかと思うし、長女といっても末っ子の場
合もある。きょうだいが、姉妹ばかり、兄弟ばかり、によっても変
わるはずだ。
 イメージというのは、本人ではなく、周りが決めることなので、
納得できないのは当然だろうと思う。
 その代わりと言っては何だが、自分以外の気質に関しては「わか
る」と合点できるのではないだろうか。
 ま、私がそうだ。

 言いたかったのは、女性たちが集まる会で、それが大いに盛り上
がったとしたら、それぞれの気質のバランスがうまく取れたのでは
ないか、ということである。
 先日の食事会が楽しかったのは、それだったに違いない、と、私
は思っている。

 仕事柄、長野新幹線を利用するのだけれど、よく女性グループが
目に付く。妙齢の女性たちだ。
 先日も、売店前に五人連れのグループがいた。
 しばらく観察しているうちに、構成のだいたいの想像がついた。
「ちょっと早いけど、お弁当、買っておきましょうよ」
 と、提案している女性が、きっと長女気質。
「じゃあ、まとめて買いましょう。清算はあとでいいから」
 と、いちはやく財布を取り出した女性が、きっと次女気質。
「冷たいビールも飲みたいなぁ」
 すでにガラス張りの冷蔵庫から缶ビールを手にしている女性が、
きっと末っ子気質。
「うーん、私は、いらない」
 さらっと答えて、代わりに女性誌をぱらぱらめくり始めたのが、
ひとりっ子気質。

 これは、揉めるのでは……。

 いやいや、とても楽しそうだった。


<唯川さんからのインフォメーション>

「最近、怪談ものを書いています。

 今回は『山姥』です。

 言い伝えを基にして、私なりの解釈をしています。これで五本目になります。

 小説新潮十月号(九月中旬発売)に掲載予定。です。」

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